±0

随想

果てしなく続く迷路を描いていくことが好きでした。
円であったり、行き来する阿弥陀であったり、そんなアイディアを膨らませて、自由帳にどこまでも鉛筆を滑らせていくのが好きだったのです。
迷路や答えを解くことよりも、行き着く先が分からない迷路やなぞなぞを自分で作ることが、楽しかったのです。
答えを知って何になるでしょう。私は知りたくなかった。分かりたくなかった。
知りたくないことを知らされるより、自分の中に知らないものを作りたかった。ずっと解けない謎を。
だからいつまでも探し続けることができる。私は探したかった。
例えば結末から先に小説を読むという人がいますが、まったく理解できませんでした。
でも過程が大事であるという価値感が先行しているわけではない。
あるいは何を不安と思うかについて私は人と異なっているのかもしれません。
将来を先々に考え、生きていくことより、何かの偶然にひらかれていることのほうが、私は面白いと思ってしまうのです。生きていけるならば。
A=Bという図式自体が面白くないのです。なにかしら、余地余白を探してしまう。
そしてどこまでも水平に展開していく。けして基礎を掘り下げたり、成果を積み上げたりというのではなかったのでした。